塵芥
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【泰平記】えあかぷ3
- 2013/04/09 (Tue) |
- 泰平記 |
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花散里の竜堂宗助と篠原の貴峯が、傍から見れば不思議な組み合わせだと思われる交流をもつに至るきっかけは、双方の性質以外に他なかった。貴峯の意志薄弱とした所、自分の中で自分という存在を決め付けてしまっている様が宗助には気に喰わなかった。
自分で自分に勝手にそんなに安く値踏みをするものではない。人ならば、生があるのならばいくらだって変われるし、変わることを諦めるのはよろしくない。宗助はそう信じていたし、彼女の周りに居る彼女を心配している者達を見てその思いは一層強くなった。
「お前にはこんなにも心配してくれる奴らが居る。斬るだけが自分などと言うんじゃねぇ」
耐え切れずにぶつけた言葉も貴峯の心には響かなかったようで、さらに宗助を苛々させた。解らせるには、こいつの認識を根底から変えねばならぬ。
付喪神の一人が自分を安く評価していようが、心を持っていなかろうが、そんなことは宗助に関わることではない。しかし宗助という男は、そういう事を知ってしまったらどうにかしてやりたいと思う男であり、つまりはお人よしなのであった。
それから宗助は刀を扱う武人達の元へ貴峯を連れていくようになった。己の刀を体の一部のように愛し、手入れし、どんな思い入れを持っているのか。それを彼女に聞かせれば何か変わるだろうと思ったのだ。
あの宗助が女を連れている!という情報は、一大事として花散里内に瞬く間に広がり、行く先々で散々からかわれもした。しかし宗助の話と考えを聞けばみなからかう口を止め、優しく己が愛刀について貴峯に語ってくれた。
数日間の武人行脚の後、ありがとうございました、と宗助に頭を下げた貴峯の声がいつもより有機的に聞こえたのは恐らく宗助の勘違いではなかったはずだ。それだけで満足して、宗助は気にするな、とぶっきらぼうに言ってその場を後にした。
本来ならそこで終わり、であったはずだ。
だが貴峯は花散里を訪れる度に宗助の元に、ぺこりと頭を下げてやってくるようになったのだ。どうやら完全に懐かれたようだな、三芳に笑われた時は深い溜息をつかざるを得なかった。
宗助は自他共に認める女嫌いで有名であっただけ、貴峯と共に居る姿は話題となった。
しかし皆が期待するような浮いた話は哀しいかな一切ない。貴峯はあまりに女らしい体つきではなかったし、心に至っては人らしくすらなかった。だから宗助は彼女を女として認識ていなかった。ただそれだけの話なのだ。
それ故、このよく解らぬ奇妙な交流は今を以って続いており、宗助もたまになんなんだ!?と思うものの、特に会話も要求して来ず、花散里の美しい桜を眺めてぼうっとしているだけだったり、手合わせをしたりする彼女との時間は悪くはないと思い、敢えて切ろうとは思えないのだった。
